介護用ベッドの製造にも貢献
介護用ベッドの試作に活用
大阪にあるシーホネンス株式会社では介護用ベッドの試作に3Dプリンターを活用しています。介護用ベッドと一般的なベッドの大きな違いは、介護用ベッドには「背上げ」「膝上げ」「床の高さ調整」などの機能が備わっていることです。
起き上がるのが困難な場合はスタッフが介助しますが、体全体を支えるので大きな負担がかかります。しかし、介護用ベッドがあればボタン1つで起き上がれるようになり、高さの調節も簡単にできます。車いすへの移乗もスムーズになるでしょう。介助する側も、される側も楽になります。
医療環境や介護環境は施設によって異なるため、それぞれの環境に応じた使いやすいベッドを提供しなければなりませんが、シーホネンス株式会社ではカスタマイズ可能なベッドを提供しているため、さまざまな要望に応じることが可能です。例えば、介護用ベッドには転倒防止のための柵がありますが、ベッドを上げたときに柵とベッドの隙間に手や足を挟むと大変危険です。柵とベッドが同時に動くようにすれば、そのような危険は回避できるでしょう。
法改正による方針転換がきっかけ
介護保険法が施行されて以降、介護用ベッドの生産台数は約34万台と高水準で推移していましたが、2006年の介護法改正でその状況は一変しました。一割の自己負担が適用されるのは、「完全に起き上がれない場合」「寝返りが打てない場合」のみになり、手すりにつかまって何とか起き上がれる程度の軽い症状の人には、介護保険がまったく適用されなくなったのです。その結果、市場は半減し、使われなくなった介護用ベッドの在庫も山積みになりました。大打撃を受けたシーホネンス株式会社は方針を転換することを決断したそうです。
元々、従来の方法では時間やコストがかかっていたため、試作品を外注するのではなく、3Dプリンターで内製化することで時間を短縮し、莫大な外注費をゼロにできるのではないか、と考えたのです。各メーカーの製品を比較検討し、強度のある3Dプリンターで試作品を製作したところ、すぐに手ごたえを感じました。外注費がゼロになるばかりか、ランニングコストは電気代とカートリッジ代のみで、すぐに元も取れたそうです。外注していた頃は3Dデータを外注先に送る必要がありましたが、それもすべて解消され、スピーディーに開発を進められるようになりました。
現在は3Dプリンターで機械部品のモックアップを作成し、配置や組み立て方法を追求・検討することで、患者や入所者に負担の少ない低床ベッドの製作に役立てています。
シーホネンス株式会社の公式サイトでは製品一覧や導入事例も紹介されているので、興味のある人はそちらをチェックしてみてください。