食材を用いた「3Dフードプリンター」
食材を素材に使うプリンター
一般的に、3Dプリンターというと樹脂や金属などから立体物を作り出す機械、というイメージが強いと思います。しかし、最近は3Dプリンターの素材に食材を使う「3Dフードプリンター」というものも登場し、大きな注目を集めています。
3Dフードプリンターは、ペースト状の食材をノズルから噴出させ、縦横に動かしながら重ねていく仕組みです。造形は機械が行うので手間がかからず、手作業では難しい食材も対応できます。複数のノズルを持つ3Dフードプリンターであれば、硬い具材や柔らかい具材といった異なる具材も別々に噴出可能なので、製造できる食材の幅も広がるでしょう。
主な用途
3Dフードプリンターは、介護食や人工肉、培養肉、昆虫食、和洋菓子などに利用できるそうです。その中で実用化が進んでいるのが介護食で、食欲を増進させる食感や見た目の改善を目的とした3Dフードプリンターの研究が進められています。
介護食は咀嚼・嚥下機能や必要な栄養素に応じて個々に用意しなければなりません。手作業で1つずつ準備するのは大変ですが、3Dフードプリンターを使えば硬さや栄養素の調整が容易にできるので手間もかからないでしょう。例えば、鮭料理を提供するとします。2つのノズルから2種類の食材を噴出すれば、身は柔らかく、皮は適度な硬さの焼き鮭が作れます。見た目や食感、味を再現することは料理を美味しくするだけでなく、高齢者の咀嚼・嚥下機能の低下を抑えることにもつながります。
メリット
3Dフードプリンターは従来の3Dプリンターと同様に、複数の素材を使用し、立体的に積層することで自由度の高い食材を作れるのが特徴です。チョコレート細工のようなデザイン性の高いスイーツや、人の手では造形が難しい食材も、3Dフードプリンターを使えば簡単に作れるでしょう。また、機械で製造するため、原料や出力設定が同一であれば、完全に同じものを再現することも可能です。
さらに、使用する食材のタンパク質やビタミン、ミネラル、糖質などの量も調整できるため、高齢者や入院患者など定められた食事しかとれない人にも健康に配慮した食事を提供できます。
また、野菜くずや昆虫など、一般的に廃棄される素材や、見た目から食材として利用されないようなものも3Dフードプリンターの素材として利用可能です。食品ロスにつながり、SDGsにも大きく貢献できるでしょう。実際、古くなったパンや果物の皮をペースト状にして3Dフードプリンターで印刷し、オーブンで焼いて水分が残らないように乾燥させれば、長期保存が可能な食材が得られるという事例もあります。